タブー破りの賢治論 吉田司著 「宮沢賢治殺人事件」 文春文庫(その1) [本]

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吉田司著 「宮沢賢治殺人事件」 文春文庫 初版1997年1月

★賢治ファンの多くの読者からは猛反対され、賢治学の研究者たちは全員無視を決め込んだ、物騒な題名の「宮沢賢治殺人事件」の著者、吉田司氏は言われる。

みんなみんな、「童貞のままで死んだり」「菩薩行者をめざしたり」した賢治の稀有(けう)で無垢なる「物語が欲しかったのであって、「実物」の賢治が欲しかったのではない。
「賢治生誕100年祭のある日、私は決めた。
賢治の亡霊(ゴースト=肥大化した虚像)を倒し、等身大の賢治の物語を取り戻そう。
そしてその軽々と小さな、彼の無名の魂を、あの花巻のお墓の下にそっと返してやろう。
私は賢治のゴーストバスターズになるのだ」

日本人はなぜ 賢治=聖者伝説を必要としたか。
日本中の<聖なる即身仏=聖なる賢治>を欲しい人々、すなわち<賢治教>の教徒たちが、寄ってたかって護持し続けてきたのだ・・・・彼らの<実像>殺しによって、今日の誇大化した賢治ブームがある。

『宮澤賢治殺人事件』では、生誕百年(1996年)を期して宮沢賢治を賛美する関連書籍が数多く出る中、賢治が国粋主義的な仏教団体である国柱会に属していたことから、長生していれば戦争に協力した可能性や、農民への無償の奉仕や文化活動を試みた羅須地人協会の非現実性を指摘した。
さらに著者の母親(吉田コト)が、賢治没後の宣伝に一役買ったことにも触れて偶像破壊を行い、物議を醸した。




<「宮沢賢治殺人事件」の帯や裏表紙に書かれてある文から引用>

無名の宮沢賢治売り出しに関わった母(吉田コト)を持つ著者が、聖者伝説を作り上げた吉本隆明から中沢新一までの賢治御用達の知識人や、情報を独占する宮沢家・出版業界の共謀を暴(あば)き、「賢治教」を信奉する現代日本の精神に挑んだ。
デクノボーとしての賢治を再生させ、伝説化した賢治の亡霊を葬るスキャンダラスな賢治論。

私たちは決して(賢治)ではない。
賢治がこの世で生き難かった哀しみは愛するが、賢治のように子守唄に呪縛されたりはしないと。
私たちはもう少しおとななのだと。


★「ひとというものは、ひとのために何かしてあげるためにうまれてきたのス」(賢治が母イチから毎夜聞かされていた寝物語)。
賢治の家は花巻の財閥で質屋と古着商をしていた。母イチの家も財閥であった。
賢治はどのようにして、どの程度の <ひとのために何かしてあげる>を実行したらよかったのだろう。
父は悪人正機説で有名な浄土真宗の信徒であった。
賢治は心象童話「洞熊学校を卒業した3人」の中で「なまねこ なまねこ なまねこ なまねこ」と言うお経を唱えながら、ウサギや狼を食ってしまうタヌキの姿をした僧侶を描いている。
★ブログ主は、賢治を最後の最後まで、裏から手をまわして経済的にも支え続けた父の宮沢政次郎のことも考えてみたい。


~~~吉田司著 「宮沢賢治殺人事件」~~1章から~8章まで順を追ってつづく~~~



柴犬カンチの足跡日記 カンちゃんのおいたや悪さもかわいいと思う親ごころ
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