世にも恐ろしい短歌 宮沢賢治「青びとのながれ」 [短歌]

短歌10首。
「青びとのながれ」
宮沢賢治22歳(大正10年)の作。
多面体の宮沢賢治、身の毛もよだつ角度の深部からの表出。
岩手では昔から冷害で作物が取れず、飢饉が頻繁におこり、多大の餓死者が出た。
(元禄15年餓死者2万6千人余り、宝暦5年餓死者4万9千5百人余り、天明3年餓死者4万8百人)
賢治は子供のころ寺で地獄極楽の話を聞き地獄の絵巻物も見ていた。
「青びとのながれ」は感じられたものをその通りに書いたものだった。
ちょうどそのころ賢治は、のちに重い結核に移行してゆく肋膜炎(結核性)の診断を下されていた。


あおびと.jpg

あヽこはこれいづちの河のけしきぞや人と死びととむれながれたり

青じろき流れのなかを死人ながれ人々長きうでもて泳げり

青じろきながれのなかにひとびとはながきかひなをうごかすうごかす

うしろなるひとは青うでさしのべて前行くもののあしをつかめり

溺れ行く人のいかりは青黒き霧とながれて人を灼くなり

あるときは青きうでもてむしりあふ流れのなかの青き亡者ら

青人のひとりははやく死人のたヾよへるせなをはみつくしたり

肩せなか喰みつくされししにびとのよみがへり来ていかりなげきし

青じろく流るヽ川のその岸にうちあげられし死人のむれ

あたまのみひとをはなれてはぎしりし白きながれをよぎり行くなり


★青びと(死人たち)の阿鼻叫喚の青い映像や意識が乗り移ってくるようで、調子の悪い時は読みたくない短歌である。
賢治の闇の深さや狂気寸前の状態を感じさせる、このような作品があるということを押さえておきたい。
童話にも怖いものが多い。


つづく~~~「宮沢賢治殺人事件」は準備中~~~



柴犬カンチの足跡日記
http://blog.livedoor.jp/kanchi_m/
nice!(254) 
共通テーマ:アート

nice! 254

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。