じわじわとしみ込んでくる異変 著者 近藤ようこ「月影の御母 つきかげのみはは」 [漫画(コミック)]

<眠れぬ夜の奇妙な話>

近藤ようこさんの作品で一番恐ろしかったのは、
私の場合、コミック「月影の御母・つきかげのみはは」(初版平成11年10月30日)だった。
月影の御母.jpg
蓮王丸と子猿のひょん太


少年蓮王丸は、産みの母を探して旅をしている。
もう亡くなっている母は、子猿ひょん太の体を借りて憑依し、蓮王丸の肩に乗り旅をしているが、蓮王丸はただの子猿だと思っていて、母だとは気ずかない。

蓮王丸は、母に化けた大うなぎ、おまえの母だと言いよってくる寺で働いている行き倒れの女、死んだ母たちの肉体をバラバラにして一人の母にした化けもの、母を名乗る白磁御前(付喪神・つくもがみ 器物が古くなると命を持って妖怪になる)、捨てられた赤ん坊を顔だけ残して竹に変え育てようとする石女(うまずめ)、蜘蛛の妖怪になってしまった父の正室(継母)などに出会う。
誰もが母になりたいのに蓮王丸の母にはなれない。哀れな母たちだ。
時々現れる線だけが引かれている、目や鼻や口のない女性の顔が、凄みを帯びていて怪しい。

蓮王丸の母は父の側室だった。
しばらくしてなかなか身ごもらなかった正室に赤ん坊が生まれると、蓮王丸の母がわが子である蓮王丸を跡取りにしたくて、蓮王丸を連れて正室の赤ん坊呪詛の旅に出る
正室の赤ん坊は呪詛が原因で死ぬ。
やさしい表情をした正室と側室の意識下の争いが哀れである。

悔しさのあまり腹に無数の蜘蛛の子を宿し、蜘蛛の化け物になってしまった正室は、蓮王丸を殺さんがため、屋敷で待っていたのだった。
正室は呪力で夫を蜘蛛に変え、夫が蓮王丸を助けようとするとバリバリと音を立てて食ってしまう。
「私がこのように浅ましい姿になったのはな、お前を待つ執念からじゃ」と蜘蛛の糸を吐いて蓮王丸に襲いかかるが、子猿のひょん太に腹を刀で裂かれる。
哀れにも蜘蛛の糸に巻いたミイラ化したわが子(赤ん坊)に顔を寄せて死ぬ。

漫画家近藤ようこさんの怪奇譚の迫力と力量は、うなされるくらいすごい。
それも哀れさ悲しさを漂わせながらっ迫ってくる。

次回投稿予定 じわじわとしみ込んでくる異変  
コミック「異神変奏」(いしんへんそう)著者 近藤ようこ


柴犬カンチの足跡日記
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