その2「もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」 [本]

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「もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」神田佳一 菊池良 (宝島社)


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こんなのあったらいいな 架空のカップ焼きそば

怪談を語り、映画も作成しデザイナーでもある稲川淳二氏のことに興味を持っておられる方がブログのお仲間にも、友人たちにも何人かおられましたので、「もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」の中から書き抜いてみました。
稲川淳二氏の擬音の入った怪談の語り口、同じことばを何回も繰り返すことでさらに接近し迫ってくる怖さが、カップ焼きそばの作り方に写しかえられている面白さがあります。


「超・お腹が空いた話 一人で食べてはいけない」 稲川淳二
あるテレビ番組のロケで東京の外れに行った時の話です。その日は撮影が長引いちゃいまして、ADの・・・・・仮にT君としておきましょう。そのたぐちくんが「稲川さん、お腹すきません?何か食べましょうよ」ってこういうんだ。あたし、こんなことってあるんだなぁ、ちょうどあたしもおなかがすいているなぁ、って、かれにお使いを頼んだんです。そしたら彼、カップ焼きそばを買ってきたんだおや~って思いましてね。と言うのもあたし、カップ焼きそばが食べたいなぁ、と思っていたんだけど、彼には伝えてなかったんだ。それで「気が利くねえ」なんて言いながらカップ焼きそばを作ってたんですね。みんなでああでもない、こうでもないなんて騒ぎながら楽しくやっていたんです。ジョボジョボーってお湯を入れて、五分待ってね、パッパッて湯切りをしたんだ。そしたら、フッとあることに気付いた。「おかしいな~、な~んか、お湯を入れる前と感触が違うぞ?」そう思いながらソースを入れて、ぐるぐるー、ぐるぐるー、ってかきまぜたんですね。それで面を口に運んでいたら「うわっ!」って。喉にズルっ!ってしたら、う~わ~、食べごたえがあるんだ!よく見たらね、そのカップ焼きそば、普段あたしが食べているものと違うやつなんです。おかしいなぁ、こんなことがあるんだなぁ美味しいなぁ~美味しいなぁ~って必死に箸を動かしましたね。その焼きそば、その後すぐに食べ終わっちゃったそうです。

★稲川淳二氏らしいなと思ったところに下線を引いています。
★CDプレーヤーとテレビのリモコンが1日おきに崩れ、今日は朝からメールとインターネットができなくなった。深夜から15時間ほどかかるバッテリーのリフレッシュをするので、ブログは明日のお昼までしばらく休みます。
★相変わらず皆様のniceのアイコンが出ません。管理画面に入って何とかやっています。




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「もしも文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」宝島社 他 [本]

自分のブログ記事の下の皆さんの下さったniceをクリックしても、いつもは並んで現われていたアイコンが現われませんので、管理ページあたりから色々工面してぼちぼち訪問させていただきます。

「もしも文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」文 神田圭一 菊池良 (宝島社)

太宰治や松尾芭蕉、相田みつを、もちろん夏目漱石も江戸川乱歩もなおかつコナン・ドイル、又吉直樹も、安部公房も内田樹もいる。
三島由紀男、谷崎潤一郎はもちろんのこと歌手の尾崎豊、稲川淳二、ラッパーの詩集の語り口や癖、そして文体を吟味してご本人になりきって書いてある。週刊文春や週刊プレイボーイ、暮らしの手帳までも100例近くもあるのだから面白かった。
個人的には、暗記している「よだかの星」を下地にした宮沢賢治のカップ焼きそばの作り方には感動すら覚えた。
買って読んでいただくのが一番ですが、短いのをご紹介してみよう。


俵万智  「このかやくがいいね」と君が言ったから七月六日はカップ焼きそば記念日

松尾芭蕉 熱湯を 集めて流し 湯切りかな  
     閑さや 部屋にしみいる 啜る音
     から容器 大食いどもが 夢の跡



<最近読んだ本>
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「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

映画は見たけれど、ナミヤ雑貨店の店主に相談事をする手紙を、夜、シャッターの新聞受けから入れると、翌朝牛乳箱に答えがもらえると言う話だったが、過去と現在を行き来する3人の青年やその他の人物たちが、それぞれこまごま交差してつながりにくく、確実に理解して記憶できないままだったので、本も読んで見ている最中です。
本屋にあふれる新刊には、異空間どうしがつながりあっている物語が増えてきた。



月の満ち欠け.jpg
「月の満ち欠け」佐藤正午 (岩波書店)


物語の舞台は現代。この娘が、いまは亡き我が子? いまは亡き妻? 今は亡き恋人?
1人の女性の意志を継いだ?何人もの女たち。死に変わり、生まれ変わりが繰り返される。
輪廻転生の期間が短い。


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いつもカンちゃんに慰められています。

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ふう~んとうなずける 「ざんねんないきもの事典」今泉忠明監修 高橋書店 [本]

残念な1.jpg「ざんねんないきもの事典」今泉忠明監修 高橋書店
寝苦しい酷暑の夜には、短いタイトルでほくそえめるものを眺めたい。
123種類の生きものが登場する事典である。残念な体、残念な生き方、残念な能力の中から1つずつ選んでみると。

ざんねんな体 
クリオネは食事の時に頭が割れ悪魔の顔をみせる(頭のような部分がパカッと開き
6本の触手が出てくる。

ざんねんな生き方
イルカは眠るとおぼれる。
数分ごとに目を交互にとじて脳を休める。1日に300回以上繰り返して何とか眠っている。

ざんねんな能力  一匹狼は弱い。




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「ざんねんないきもの事典」(続編)今泉忠明監修 高橋書店

113種類のいきものたちの
ざんねんなこだわり
ラッコはお気に入りの石をなくすとごはんが食べられなくなる

ざんねんな体
リュウグウノツカイは体の半分は食べられても仕方ないと思っている(重要なパーツは体の前にある)

ざんねんな生き方
バン(鳥)は弟や妹の世話につかれて家出をする。

ざんねんな能力
馬は全速力で走り続けると死ぬ。


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再読中  小説・エッセイ・メモ・評伝 島尾敏雄・島尾ミホ  [本]

魅力的な最高傑作 2度読みの最中
島尾ミホ・島尾敏雄 愛の戦い 
ブログ主は、まだ、なまなかな言及さえもできない状態にあり、失礼いたします。


島尾ミホ 「海嘯」 銀河叢書
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島尾ミホ エッセイ集「愛の棘」 幻戯書房
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島尾敏雄 「死の棘」新潮文庫
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島尾敏雄 「死の棘」日記 新潮文庫
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「狂うひと」梯久美子 新潮社 
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「死の棘」の愛人の正体は?本当に狂っていたのは妻か夫か。



最近見た劇場映画
「キングコング:髑髏島の巨人」抜群に面白かった!最高だった!
「ゴースト・イン・ザ・シェル」
「パッセンジャー」

柴犬カンチの足跡日記  13歳のカンコちゃんの幸せな毎日
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(2)山の霊異記「ヒュッテは夜嗤う」(安曇潤平・著  幽ブックス メディアファクトリー [本]

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★20話ある中で、身近に感じられ、少しばかりリアルに想像できる話を1つ選んでみた。
ぼんやりと過ぎていく日常生活の中でマンネリ化しふやけていく生命感。
山でも海でも命を落とす危険は紙一重だが、そのぐっとくる緊張感の一歩一歩を味わいたい。





< 「隧道」(すいどう) トンネル  「ヒュッテは夜嗤う」安曇潤平 より一部を抜粋 >

ガイドブックにも載っていないような秘境にある無名の山を見つけては、出かけてゆく3人の男たちがいた。
雨に降りこめられたため、今は廃線になっているが、昔はダム建設のため資材輸送用に使われていた鉄道のトンネルの中を通ってみることにした。
真っ暗なトンネルの中をヘッドライトをつけて進むうちに、左に一本のわき道があるのに気づいた。
地面にたまり始めた水が、くるぶしあたりにまできたので、道がVの字に傾斜していない限りこんなことは起こらないはずだといぶかしく感じた。
不安な気持ちに襲われたので、2人がトンネルの先の方を偵察することになったのだが、2人は背中まで水につかってしまった。
残された1人は、先に進んだ2人の背後に何人もの人影を見た。

「他の人たちって?」
「先輩たちといっしょにいた人たちですよ。」
「おいおい。おかしなことを言うなよ。おれたち以外、人なんていなかったぜ」
ヘッドライトの先を見て悲鳴を上げた。
トンネルの先から、大量の水がこちらに向かって濁流のように押し寄せてきた。
しかも、その濁流の中を瞳のない窪んだ眼で大きな口を開けたミイラのような風体をした何人もの人間らしき塊が、水から上半身を出して両手を上げながら3人に向かって進んでくるのだ。

先ほど見つけた一本のわき道に座っている老人が手招きをしている。
3人がわき道に入ると、間髪を容れずに、濁流とミイラのような真っ黒い塊の群れが、まっすぐ前を向いたまま人のものとも獣のものとも判断のつかない異様な唸り声をあげながら、目の前を通り過ぎて行った。


★まわりで何が起ころうとも朝までぐっすり。 
丑三つ時(午前2時~2時30分ごろ)に寝ぼけて幽霊にあいさつをするタイプ。友人に欲しい。
くま.gif
原 みつるさん作



「ヒュッテは夜嗤う」
目次
1)5号室 2)隧道(トンネル) 3)幻惑の尾根 4)異臭 5)呼ぶ声 6)リフト 7)豹変の山  8)赤い靴
9)スノーシュー  10)ピッケル 11)ツエルト 12)噂の公園その一 13)噂の公園その二 14)境界線
15)猫の山 16)鹿乃牧温泉 17)終焉ンの山 18)仙人ンの山 19)古の道 20)息子 


<きわめて個人的メモ>

映画
★最近鑑賞した劇場映画
「杉原千畝」(すぎはらちうね)

音楽
★1つのCDを1週間から1カ月聞き続ける。
 リコーダー 天賦の輝き ミカラ・ペトリ
 家族トリオ  リコーダー (ミカラ・ペトリ)  母(チエンバロ・ピアノ)  弟(チエロ)

(曲名)
無窮動・グリーンスリーヴズ (トウ・ア・グラウンド)・勝ち誇るウグイス・恋のウグイス・天使のナイチンゲール・ 蚊の踊り・ミツバチ・くまんばちの飛行など22曲



<各器官のおとろえによる、ひじょ~に個人的な感想。>
★古い映画はゆっくりとした懐かしいテンポを味わえるが、まどろっこしくて時々退屈。
★最近のものはテンポが早く、字幕を読むのが精一杯。時々退屈。



柴犬カンチの足跡日記  愛犬は、兄弟姉妹にも子供にも孫にもなってくれる。
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(1)山の霊異記 「ヒュッテは夜嗤う」 安曇潤平・著  幽ブックス メディアファクトリー [本]

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山の霊異記 「ヒュッテは夜嗤う」 著・安曇潤平 2013年5月29日(初版) ¥1400+税 
※ヒュッテとは山小屋のことです。ドイツ語。



<あとがきにかえて>より、一部を抜粋

特に高い山に登った場合、恐ろしい体験にいちいち付き合っていられないのが本音である。
まして冬山ともなれば、その困難さは夏山とは比較にならないものになる。略
僕にとっては、山の中にいるときは、死に対する恐怖が一番上にくるのだ。略
僕はなぜか寝袋から抜け出して横になっていた。体の自由が利かない。略
その時突然、誰かが僕の左右の足首をギュッと掴んだ。略
なんと二本の腕が外からテントの中に突き出て、僕の足首をつかんでいるではないか。足首をつかむ手に力が入り、僕はその腕に引っ張られてテントの外に引きずり出されそうになった。略
その時、僕の心にわいたのは恐怖ではなく、猛烈な怒りだった。略
「おめえに付き合っている暇はねえんだよ。とにかく眠らなきゃあいけないんだ。頼むから放っといてくれよ!」略
「悪かったな」 テントの外から小さな声が聞こえた。

★山で遭難した人の霊としゃべったあげく、追い払った人は珍しい。
★山の霊異記 「ヒュッテは夜嗤う」は、次回(2)に続く。


何が起こっても朝まで気づかない人もいる。いてくれると楽しい。
ぶた.gif
原みつるさん作




★昨日、道に人っ子一人いない、誰も行かない、故郷の山の小さな滝2つと崖を写真におさめてきた。
この崖のところどころは硫黄の色をしている。
この崖は、私が母から生まれる、血液臭い胎内(なんと私は、夢では崖の中から生まれる。苦しい。産婆さんの声もする) の夢の中に出てくる。何度も見る夢だ。



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「鳥の仏教」 中沢新一著  新潮社 [本]

鳥の仏教.jpg
「鳥の仏教」 中沢新一著  新潮社

原みつるさん.gif
原みつるさん作

最近友人の一人から共感の感想をメールでいただいたので、「鳥の仏教」を再投稿してみた。
あろうことか本人は全く忘れていたので、新しい体験としてもう一度読んでみている。


「鳥の仏教」は、チベット人の仏教徒によってチベット語で大乗仏教の経典を模して書かれたものだ。
カッコウに姿を変えた観音菩薩が鸚鵡の呼びかけにより、ハゲワシ、鶴、カラス、雁、セキレイ、ライチョウ、鳩、フクロウ、オス鶏、ヒバリ、孔雀、ウズラなどと対話する。
鳥たちは鳴き声を上げながら、その音声に意味を込める。
鶴の鳴き声「スンゴ―」は、守らなければならないという意味。カラスの鳴き声「トッキョン」は、救いが来ますと言う意味。フクロウの鳴き声「ウトゥ ウトゥ」は、なんと哀れなと言う意味。
鳥の数ほどの叡智の中の最高のものは、「他の生きものを助けるような生き方をした時だけ、あなた方は真実の幸福を得ることができるでしょう」だった。
一貫して世の無常を繰り返しているのは、「白骨の御文・蓮如」と教えが相似している。
実際のところは読み手の資質(バックボーン)で感じたり理解したりするわけだが、「鳥の仏教」は現代人の私にとっては第一にさわやかで森の中の静かな沼に太陽や月が移り込んで輝いているような、また異国情緒たっぷりな桃源郷の塔に陳列された芸術作品を観るようであった。
古代人は、現実世界の意味を把握するために、時間と空間が融合する神話的思考を自然と行っていた。
現実と神話の間を行ったり来たりするようなあり方は、昔のチベットではよく見られていた。

<以下本文より>
「動物には、人間と同じように心があり、その心にはしばしば人間を凌駕する特性が宿っている。~略~人間の理想とする菩薩の徳性と、本質においても同じものである。」~略~「神話の思考には、人間の心と動物の心とに共通の基体のようなものがあり、その部分を通じて両者はお互いの間に共感やコンミニュケーションの通路を開くことができる。この基体のことを祖先の時間、神話の時間、夢の時間とよんでいた。それは普通の状態では、現実の世界の表面に現れることはないが、現実の潜在下にあって、絶え間ない活動を続けている」~略~「ブッダにとっては、人間だけがダルマ(法 教え)を知ることのできる特権をあたえられているのではなかった。鳥も、虫も、魚も、ウイルスもすべての生きものがダルマの心理を理解して、自分を拘束している生存条件からの自由を果たす資格を持っていた。」
ウイルスもと言うところがすごい。



★山の怪異譚「黒い遭難碑」(安曇潤平著)は、私鉄電車やバスやJR電車の中で読んでいる。
山岳怪談実話のトンネルの中の急な増水やうごめく影、トロ(渓流釣り用語で水の流れ穏やかな深い淵)のそばで語り合う体のどこかしらがない人々の(死者たち)や山中で追いかけてくる乳母車などは相当怖い。
※後日紹介予定

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★山歩きをする人には、「闇屋」と言う夜の闇の中を単独行する人がいるそうだ。
奇妙な体験は当たり前のことで、山ではどこからともなく子供の歌うわらべ歌が聞こえてくることもあるそうだ。
(「黒い遭難碑」 解説 中野純氏)より


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安曇潤平(あずみじゅんぺい)   山の霊異記「赤いヤッケの男」 極上の山岳会談実話 [本]

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山の霊異記「赤いヤッケの男」(26話)  安曇潤平・著  MF文庫 ダ・ヴィンチ ¥619


日本の山にまつわる怪談奇談を集めた本。
作者自身が体験した話もあるし、山仲間や、あるいは一杯やりながら山小屋のオヤジから聞いた話もある(まえがきより)

★どんなに低い山でも、思いがけないことが起こる場合がある。
石が落ちてきたり、雷や霧に出会い道を失い、川にはまったりすることだってある。
いつ命を落とすかもわからない緊張感と不思議な話を聞くことができると言う類まれなる体験ができるということで、最近、山の霊異記本に興味を持つようになった山育ちのブログ主である。
★キジ打ちとは登山用語で用をたすことだと言うことを知った。


原みつる.gif
原みつるさん作


ザックがもたれかかっているはずがない。
何か言い知れぬ恐怖を感じて、谷山は自分の右肩を見た。 
何があったと思う?
赤いヤッケの男さ。
(本のカバーの裏に記されていた、赤いヤッケの男の文章の一部)
★運べそうにないので山に置いてきたはずの遺体がそこにあった。
下山する途中で遭難し、救助隊に助け出された自分が背負ってきたものらしい。

山そのものより山麓の地酒とその土地の珍味を愛する私は、登山を趣味とする他の人々と違って、山行きを共にするよりも、居酒屋で山の仲間と顔を合わせることのほうが多い。
(「赤いヤッケの男」 八号道標の冒頭より)


安曇潤平氏のサイト 裏自己紹介(北アルプスの風)
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/junpei_s/kaidan-jiko-shokai.htm

4歳。トンボを捕りに行った夕暮れ。大池から突き出す小島の先で、刃の先を水面に浸す甲冑を着た武士の姿を見る。畠山重忠が戦の前に水溜りで刃を洗ったところ、その水溜りが大きくなって大池となったという、地元に伝わる伝説を知ったのは小学生になってからのことである。(裏自己紹介より)
★異質な自己紹介を読むだけでも、こんな世界があるのかと怖くて面白くて興味深い。

安曇潤平氏の他の本「黒い遭難碑」「ヒュッテは夜嗤う」
現在は、「ヒュッテは夜嗤う」を読んでいるので、後ほど御紹介。



柴犬カンチの足跡日記  カンちゃんが住む北海道に冬到来
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「山の不可思議事件簿」 上村信太郎著 山と渓谷社 [本]

世界中の山と登山にまつわる怪現象、不思議、謎、奇跡、魔の山、神秘と伝説、怪談、怪物など、定番的な山のエピソードを紹介。(本の帯より)
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「山の不可思議事件簿」上村信太郎著 山と渓谷社 900円(税抜き)
初版2015年10月15日

「山の不可思議事件簿」は新聞や雑誌の記事から集めたもので、1991年に出版された上村信太郎著「山のふしぎと謎」(大陸書房)の内容に加筆修正し、書き下ろしを加えて再構成したものである。


★死を覚悟しておかなければならない緊張感といきいきとあふれ出てしまうユーモアがたまらない。


 ブログ主が選んだ1話 < 謎の生き物「ギアナ高地で遭遇した怪鳥」> 1985年(昭和60年)筆者は、ギアナ高地の秘峰ロライマに隊長として仲間4人と登山遠征し、頂上近くで深夜、巨大な怪鳥と遭遇。大きな羽ばたき音と恐ろしい啼き声を聞いた。 ~中間の文を割愛~垂直の岩壁に深くえぐられた岩の溝を登り続けていると、いつしか雨が止んで頭上に星がまたたいていた。 突如、近くの岩棚から「バッサ、バッサ、バッサ」と大きな鳥が飛びだしてびっくりする。 怪鳥は背後に去ったが、まもなくして戻ってきた。 暗闇だが筆者に向かってくる。今度は威嚇するように頭上3メートルで羽ばたく風が頬に届いた。 星空に透かしてみると、黒いシルエットの翼長は2メートルはあった。 不意に鳥が啼いた。「カッキーン、カッキーン」木の枝を折るような大きな音だった。 生まれて初めて聞く、忘れられない恐ろしい声だった。 筆者は、コナン・ドイルの『ロストワールド』に出てくる恐竜を思い出し、「まさか翼竜じゃ・・・・!?」とつぶやいてしまった。~略~ ロライマの頂上台地が20億年もの長い間下界と隔絶されてきたことを考えれば、恐竜はともかく、未知の動物がいたとしても不思議ではない。

上記のことを詳しくつづった上村信太郎著「ギアナ高地探検記」(46ページある)は、電子文芸館に掲載されている。

http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/nonfc/pdf/KamimuraSintaro.pdf



上村ロライマ山頂.jpg
ロライマ山頂に立つ上村信太郎氏 撮影・小野崎良行



興味のない方はスルーしてください。       


★56話もある話を1つ1つ紹介できないので目次を紹介。

「山の不可思議事件簿」 上村信太郎著 山と渓谷社
<目次>
第1章 奇妙な現象 
◎山の怪現象 マッターホルンで目撃された幻影/消えた4階建て宿舎の怪/テントに近づいてくる謎の靴音/知らないうちに移動した山小屋/ブロッケンの妖怪とセントエルモの火/山奥から響いてくる奇怪な音 
◎山の不思議 女神の山で女神になったアメリカ人女性/頂上をめざす動物たちの怪/朝日連峰の不可思議な遭難/リングワンデルングの恐怖/ヒマラヤに消えた記憶/ニカ国語を理解した名登山犬◎山の謎 富士山初登頂の謎/大雪山に残されたSOS文字の謎/ヒマラヤ登山史上最大の謎/エベレストで遭難した旧ソ連隊の謎/身元不明の遺体の謎
◎山の奇跡 人肉を食べて生還したアンデスの遭難者/エベレストから転落して生還した男/雪崩に埋まり13日間生き抜いた青年/ヒマラヤで宙吊りから救出された日本人/アルプスの氷壁から滑落して助かった日本人/国内の奇跡の生還者たち

第2章 恐怖と神秘 
◎魔の山 殺人峰アイガー北壁/人喰い山ナンガ・パルバット/犠牲者世界一の谷川岳/死を呼ぶ山ミニヤ・コンカ 
◎神秘と伝説の山ノアの箱舟の山アララト/アリストテレスが予言した山/エベレストよりも高い山/ギアナ高地に実在したロストワールドの山/崑崙の謎の山ウルグ・ムスターグ

第3章 伝説と怪談 
◎山の伝説伝承 猫又伝説の謎/埋蔵金伝説の謎/ヒダル神の伝説
◎山の怪談 吹雪の避難小屋の亡霊/真夜中にともる消したはずのローソクの灯/深夜ひとりでに開いた山小屋の扉/テントの中に押し入った幻影/ウペペサンケ山の怪異

第4章 謎の生きもの 
◎山の怪物 中国の秘境に生息する謎の大脚怪/ギアナ高地で遭遇した怪鳥/まぼろしのツチノコを探す/黒部峡谷の正体不明の足跡と奇妙な声/カナダの獣人サスカッチ/中国で頻繁に目撃される野人/コーカサス山脈の謎の獣人カプタル
◎謎の雪男 雪男の足跡写真を発表した登山家/雪男を近くで観察したポーランド陸軍中尉/雪男を間近に目撃した日本の登山家/奇抜な作戦の日本の雪男探検/鈴木紀夫さんがつかんだ雪男の正体/日本の登山隊が持ち帰った雪男の体毛とフン 
◎絶滅動物の謎 ニホンオオカミは発見されていた/九州のツキノワグマは絶滅していない/カッパの正体はニホンカワウソか
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現代版 遠野物語「山怪」(さんかい) 著者・田中康弘  山と渓谷社 [本]

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原 みつるさん作


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「山怪」(さんかい) 著者・田中康弘 山と渓谷社 1200円
山で働き暮らす人々が実際に遭遇した奇妙な体験。現代版遠野物語(本の帯より)


民話や昔話とは違っていて起承転結がはっきりとあるわけではない魅力的な不可思議な出来事。 宗教的または道徳的戒めを含む要素が皆無な、大蛇や狐や狸や河童に関する謎の現象譚を集めている。



★一番怖ろしかった話を1つ御紹介。
「もう一人いる」

白山連峰。5人の作業員が、登山道の拡幅作業で現場に入った。
15時前に天候が急変しガスがかかってきて30センチ先も見えなくなったので、下山することになった。
ムカデ競走よろしく一列になると、5人とも前の人のリュックに手をかけて歩きだした。
その時、班長が変なことを言い始めた。
「いいか、何か来るかもしれないけど絶対に慌(あわ)てるな!落ち着いて黙っているんだぞ、絶対に慌てるなよ。そうすれば何もしないんだから」

「おぅい!!ちょっと待ってくれ、何か、来たみたいだよ~」一番後ろを歩いていた同僚が情けない声を出した。
「よーし、止まれー。後ろを向くなよー」
いったん小休止して、全員登山道に座り込んだ。

再び全員で立ち上がった。
「どうだぁ、まだいるかぁ?」
「う~ん、まだいるみたいだなあ・・・・」
「そうかぁ、よ~しもう一度全員しゃがむぞー」
再びしゃがみこんだ男たち。

★いったい何が起こっているのだろう(ブログ主)
「濃霧の日には何かが出るらしいんですよ」と書いてあってもよくわからない・・・。



あの時起こったことはこうだ。 列の最後尾を歩いている人のリュックを何者かがぐっと掴んだのである。
そんな時は、絶対に振り向いてはならない。
そして大声を出して騒いでもいけない。静かに少し待つのである。
そうすれば、必ずその何者かは去ってゆくらしい。
・・・・見えない何かがそこにいるらしい。


山で働き暮らす人々が遭遇した人情味あふれる奇妙な体験が53話も掲載されている。
このような目に見えないものを絵にしたのが漫画家の水木しげるさんだろう。

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がしゃどくろ 水木しげる
がしゃどくろとは、近代になって創作された日本の妖怪。
戦死者や野垂れ死にした者など、埋葬されなかった死者たちの骸骨や怨念が集まって、巨大な骸骨になってしまったもの。



柴犬カンチの足跡日記 12歳の誕生パーティの様子
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