油蝉 アブラゼミ [エッセイ風]

腹を上にした油蝉が、ベランダで何匹も骸になっている。
早朝からそうとうの数の油蝉が、名前どうりに油でものを揚げる時の音そっくりに「ジージージワジワ」と泣き始め、ずっと聞いていると「ワシワシ バシバシバシ」ともっとひどい声で押してくる。
アブラゼミ2.jpg


電車の中で会社勤めらしい男性が連れの女性と嬉しそうに話していた。
男性「最初にジジ-っとどっかで鳴き始めたと思ったらね それからずーっと鳴いているんだよ。あははは。
みんなであちこち探したら、何でこんなとこでっていう隣の部屋の床で蝉が見つかってね、くっくっく。
それから油蝉を掴んで外に飛ばした人がいるんだ。ははははは。野生児って言われている人だけど、一匹の
蝉で大笑いだよ。」
女性「その人きっと森山君でしょ」
男性「あたり!ぶわははは」

暑い日の会社の仕事の最中に、油蝉に訪問されたことがこんなに喜ばれている。
均一化された顔で仕事をしている中で、森山君が野生児の表情を取り戻し、油蝉をつまんで、みんなの前を横切ったことが嬉しかったらしい。
白いシャツを着た森山君にそっくりな大きな油蝉が思い浮んだ私は笑いをぐっとかみ殺した。



鳴くのはアブラゼミのオスだけで、腹の発音筋で発音膜を震わせて音を出し、腹の中の空洞に音を響かせるので音響効果抜群。
後ろ足の付け根の左右にある腹弁(ふたのような硬い膜)で音を整える。
腹弁をめくってみると白い膜があるが、これが耳の鼓膜にあたり、他の音と仲間の声を聞き分けることができる。
鳴くのはメスをさそう「本鳴き」や、「呼びかわし音」、「悲鳴音」、「休息音」などあるが、一番感心したのは、仲間の声にこたえて鳴く「合いの手音」だ。
相手に反応して合いの手を入れるかのように鳴く。
序奏、中間奏(興奮気味)、後奏もある。
口吻を見ると長く、木にさしこんで汁を吸うにはもってこい。
つかんだ時におしっこをかられけると思っていたが、あのあの液体は木の汁の余分だった。


★「アブラゼミ」は4年前に投稿した文を再掲載。 
  しばらくはナイスが0だった昔の投稿文を再投稿するかもしれない。
★ある通信制高校の夏季講座では、200人近くが集まる。
外部の者を講師として呼んでめったに聞けないことなどを聞くらしいのだが、私は講師として土笛・石笛の演奏と欠陥家族の体験談を急きょ話すことになった。
次の夜父が初めて夢に現れた。そのことについては後日書けるかもしれない。
それからというもの深部から揺り戻しが来てあらゆるものに興味が持てなくなったが、だんだんに取り戻しつつある。
詩のほうも人間の濃い業や影の部分を追及しているので誤解を受けやすく詩誌にしか公開していない。


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