干し草の日  水野るり子  詩誌「二兎」No.5より   象を撫でるー大きなものへ [詩]

詩誌「二兎」No.5  象を撫でるー大きなものへ



「干し草の日」  
 
作  水野 るり子 


裏庭に  一人の少女が
恐竜を放し飼いにしている・・・
そんなお話を読んだ※               ※池澤夏樹 「ヤー・チャイカ」より


まいにち、時間になると
五階のベランダに干し草を置いてやる
と、まもなく草原のほうから
一頭の恐竜があらわれて
首をのばし  その干し草をたべはじめる
・・・恐竜の目が笑っている
それが少女のわくわくする秘密だった


  そんな日を  (わたしも) 生きていた
  そんな日から  一歩  一歩  歩いてきて
  今は  あの恐竜の名さえ  うろ覚えだ
  (でぃ・・・でぃーぷ・・・ろどく?)
  (ディープロドク!)
  いったい  おまえは  今  どこに?
  あの大きな時間のなかで
  いつまでも  おまえに
  干し草をやりつづける気でいたのだが。
  
          *

夜ふけになると  ふときこえてくる  あれは
飼い切れなかったものたちの呼び声?
クジラ、 薔薇星雲、 そして遊ぶゾウたちなどの?


いま、草原をゆく綿毛たちのように光って・・・
沈んでゆく世界の片すみに
一頭の恐竜がうずくまり
その目がかすかに笑っている



★作者は今はもううろ覚えになってしまった恐竜の名を、記憶のなかからやっと呼び戻している。
  夜ふけ、ふと聞こえてくるクジラや薔薇星雲、遊ぶゾウたちの呼び声に耳をすます。
  作者の耳は星空に広がるダンボの耳?
  子供たちの間では「象列車よ走れ!」の曲が歌われている。
  


ヤー・チャイカ は小説「スティル・ライフ」(中公文庫)に掲載されている。
ヤー・チャイカとは、1963年ボストーク6号の宇宙飛行士テレシコワのコールサイン「私はカモメ」(ロシア語)
ヤー・チャイカ スティル・ライフに掲載.jpg


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絵本「ドード―を知っていますか」(福武書店) 絶滅した動物たちが描かれている。


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「世界は音」ナ―ダ・ブラフマー(人文書院) 
 世界は巨大な宇宙的楽器 J・E べーレント著 大島かおり訳



柴犬カンチの足跡日記
http://blog.livedoor.jp/kanchi_m/




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