武田鉄矢「小説 賢治売り」・「賢治文学 呪いの構造」山下聖美 [本]

俳優の武田鉄矢は、賢治を崇拝し、賢治の宣伝係を自負している。
しかし賢治童話は、不気味で物騒な雰囲気が漂っているから、子供には読ませたくないと言っている。

小説 賢治売り.jpg

<賢治童話>
注文の多い料理店・・・詐欺による殺人未遂
銀河鉄道の夜・・・少年の臨死体験
グスコーブドリの伝記・・・職務完遂のための殉死
なめとこ山の熊・・・熊に襲われ、死亡した猟師
風の又三郎・・・見慣れぬ転校生に妖怪のあだ名をつけ、いじめる在校生
ひかりの素足・・・幼い兄弟の雪道での凍死事故
よだかの星・・・醜さを苦にした鳥の自殺
(武田鉄矢「小説 賢治売り」)より

★上記の判断は当たっているとも思えるが、なんだかあっさりしすぎているので「賢治文学 呪いの構造」を書いた山下聖美氏の文章も見ることにする。


山下聖美氏は、賢治童話は実は大人のための童話であると言う。
話はどんどん怖いほうに傾いていくのだが、賢治童話「土神ときつね」は、樺の木(女)、土神(男)、狐(男)との三角関係の愛憎の果ての惨劇が、実に恐ろしくラストに描かれている。それはまさに殺人鬼の残酷シーンであり、もはや『八ッ墓村』の世界だ」と言う。
また賢治童話「雪渡り」は、人間の四郎とかん子が、狐の幻燈会に呼ばれる話だが、「そんな場所に呼ばれてしまうことの恐ろしさを、秘め隠しているのである」「それはまさに幼い兄妹が、現実ではなく、死の世界へと向かっていることを表わしているのだ」
「兄妹の四郎とかん子の名前も不吉なものとして浮上してくる。四郎の「し」は「死」に、かん子の「かん」は棺おけの「かん」として不気味に響いてくる。」とも言う。
「結局、賢治童話は大人の童話であるのと同時に、やはり子供も読む童話なのである」「子供たちは、砂糖のコーティングをなめながら、狐と主人公たちの会話を無邪気に楽しむ。そこに放たれる死の匂いを無意識のうちに嗅ぎながら」
「大人たちは砂糖のコーティングを突き破って、その深部に広がる恐ろしいものを、のぞいて見ようではないか。賢治童話の深読みの世界を味わってこそ、大人の解釈と言えるだろう」
(「賢治文学 呪いの構造」山下聖美より抜粋)



柴犬カンチの足跡日記 カンちゃんが怖いのは花火と雷で~す!
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