恐るべき数字の謎  「賢治文学 呪いの構造」山下聖美 三修社 [本]

<賢治童話における数字>「賢治文学 呪いの構造」山下聖美より
 第3章の一部から

賢治童話に出てくる具体的な数字は、得体のしれない不気味な匂いを放つ存在である。
現実的に考えれば明らかにおかしい数である。尋常ではない。
一例として植物や人間の化け物がたくさん出てくる「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」では
三千六百五十三回落第した学生が出てくる。
また童話「ツエねずみ」では、自分の気に入らないことをした者に「償って(まどって)おくれ」を二百五十回繰り返すツエねずみがいる。
童話「カイロ団長」では、あまがえるがとのさまがえるが売っている酒を三百四十二杯、粟粒のコップで飲んで借金が増えてゆく話である。

「賢治文学 呪いの構造」山下聖美 三修社
賢治文学.jpg



賢治童話「ポラーノの広場」ではつめくさの表面の花を正面から見ると、茶色い模様が見える。
それが数字に見えてくるのである。
つめくさ.jpg
1256、1758、3426、3866、2556と具体的に見えているところが不気味であり、さらに五千まで数えれば、なぜ「ポラーノの広場」に到達するのかも謎であると筆者の山下聖美は言う。

文芸批評家・清水正の(三・六・九)説では、すべての数に意味や潜在的な力があると考えられている。
数秘術的な解釈によって「銀河鉄道の夜」を検討してみると、
「もう駄目です。落ちてから四十五分たちましたから」と水死したカンパネルラのお父さんが言います。
数秘術的な解釈では、四と五をたして九とする。
古代ユダヤの時の数え方では、イエス・キリストが息を引き取ったのが九時である。
カンパネルラの死が象徴的に決定づけられる。
イエス・キリストが十字架に架けられたのが三時、地が闇に覆われたのが六時となっている。

賢治童話の「北守将軍と三人の医者」の中に出てくる180、360、18は数字を切り離してたしていくと九になる。
賢治童話「ポラーノの広場」の数字をたしていくと、1256は(5)、1758は(3)、3426は(6)、3866は(5)、2556は(9)。5・3・6・5・9となる。
9に隣接する数(前の数)は、5となり、賢治童話「ポラーノの広場」に出てくる「五千まで数えれば」は広場に到達する数である。

★賢治は一つの言葉や名前を何度も繰り返す習癖があるようだ。
化け物の世界を表している「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」の初期原稿は
「ペンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
ネンだけ数えてみると63回だ。
読んで聞かされる弟妹たちが短くしたほうがいいと言ったという。
「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」のような初期の童話はとてつもないパワーがあって大好きである。
頭脳明晰な編集者に分かりやすく整理されたり、削除されないで残っているカ所があることは、パワー満タンの不思議な言葉を感じることができるのでありがたいことだ。



柴犬カンチの足跡日記
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